2022年7月に実施された参議院議員通常選挙では、全国・全年代の投票率は52.05%となりました。しかし20代の投票率は34%と低い状況にあり、選挙に参加する若い世代の減少が懸念されています。
今回の参院選における年代ごとの投票率に加え、2021年の衆議院総選挙や2019年の前回参院選での年代別投票率と比べた変化をまとめました。
年代別投票率の調査方法や、投票率を向上させる取り組みについても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
本記事では、参院選では選挙区、衆院選では小選挙区の投票率を記載しています。
2022年参院選の年代別投票率
参院選や衆院選の国政選挙後には、総務省が全国や都道府県別、年齢別の投票率を集計し発表しています。
2022年参院選の都道府県別投票率については、こちらの記事もご覧ください。
2022年参院選の投票率は過去と比べて低い?都道府県別トップ3も
年齢別投票率の調査方法
年齢別投票率は、各都道府県の選挙区の中から標準的な投票率を有している投票区(投票を行う区域)を抽出し調査しています。年齢は選挙期日の満年齢です。
20代が最も低く、60〜70代が高い
2022年参院選の全国の投票率は52%です。年代別投票率と投票者数を総務省の公表データをもとにまとめました。(小数点以下四捨五入、以下同様)
- 10代(18、19歳):35%
- 20代:34%
- 30代:45%
- 40代:51%
- 50代:57%
- 60代:66%
- 70代:66%
- 80代以上:52%
20代が最も低く、40代以下はいずれの世代も全体投票率を下回っており、選挙に参加する若い世代の減少が懸念されています。
年代別投票者数はどれくらい?
総務省による全国の「人口推計」を元に、各年代の人口に投票率を掛けることで、投票者数を概算しました。人口は2022年7月1日現在の概算値です。人口推計では18、19歳だけの人数は公表されていないため、除いています。
年代 | 総人口 | 投票者数(人口×投票率) |
20代 | 1250万人 | 425万人 |
30代 | 1369万人 | 616万人 |
40代 | 1752万人 | 894万人 |
50代 | 1736万人 | 990万人 |
60代 | 1502万人 | 991万人 |
70代 | 1637万人 | 1080万人 |
80代以上 | 1229万人 | 639万人 |
前回参院選や衆院選の年代別投票率
2019年の参院選、2021年の衆議院総選挙における年代別投票率についてまとめました。年代別投票率はいずれも抽出調査によります。
2019年参院選
2019年7月の前回参院選の全体投票率は49%でした。年代別投票率は以下の通りです。
- 10代(18、19歳):32%
- 20代:31%
- 30代:39%
- 40代:46%
- 50代:55%
- 60代:64%
- 70代:66%
- 80代以上:43%
2021年衆院選
2021年10月の衆院選では全体の投票率は56%です。年代別投票率は以下のようになりました。
- 10代(18、19歳):43%
- 20代:37%
- 30代:47%
- 40代:56%
- 50代:63%
- 60代:71%
- 70代:80%
- 80代以上:49%
2021年衆院選の地域別・年代別投票率については、こちらの記事でも取り上げています。2021年衆院選、地域別・年代別の投票率は? | スマート選挙ブログ
今回参院選との比較分析
前回参院選・衆院選と今回の参院選をあわせて見ると、いずれも10〜30代の投票率が全体投票率と比べて低い傾向がわかります。
2016年に選挙権年齢が18歳以上に引き上げられ、今回で5回目の大型国政選挙となりました。年代別では、20代の投票率が10代に比べて低い状況が続いています。
この理由として挙げられるのは、10代は高校の授業などで投票や政治参加を意識する機会が多いことです。また高校卒業後は住民票を地元に残したまま、別の地域に進学や就職するケースもあり、投票のためだけに帰省するとは考えにくいといえます。
20〜70代までは、年代が上がるとともに投票率も上がっています。しかし80代を超えると、選挙に足を運ぶ人が減少する傾向です。これは体力や体調面の事情や、交通の便が悪い過疎地域では高齢者の移動手段がないことなどが考えられます。
20〜30代投票率の推移
主に20〜30代の若い世代の投票率について、平成以降の国政選挙における推移と傾向を探ります。
参院選の年代別投票率
1989年の参院選では20代の投票率が47%、30代が65%と、現在に比べると高めでした。全体の投票率は65.02%で、65.29%だった30代の投票率がわずかながら上回りました。
20〜60代は年代が上がるとともに投票率も上がり、全年代を通して60代の投票率が最も高いという傾向は当時から続いています。
衆院選の年代別投票率
衆院選でも同様に、1990年は20代が58%、30代が76%と現在より大幅に高い投票率でした。全体投票率が75%で、ここでも30代の投票率が上回っています。全体を通して60代の投票率が高いことも同様です。
投票率向上の取り組み
引き続き若い世代の投票率が低いことについて、総務省は次のように懸念や対策を示しています。
いずれの選挙でも他の年代と比べて、若年層の投票率は低い水準にとどまっていることから、総務省では、特に若年層への選挙啓発や主権者教育に取り組むとともに、関係機関等と緊密な連携を図り、投票率の向上に努めることとしています。
具体的には、どのような取り組みがあるのでしょうか。
「センキョ割」でお得アピール
選挙期間中、民間のお店やサービス施設などが「センキョ割」として、投票済み証明書を提示すると割引やノベルティが得られる企画を実施しました。
投票率向上を目指すだけでなく、お店にとっては割引をきっかけに来店者増加が期待できるメリットがあります。
センキョ割に関しては、こちらの記事もぜひご覧ください。
センキョ割とは?割引内容や利用方法についてご紹介!
大学やショッピングモールに期日前投票所
仕事や家庭の用事などで、投開票日に選挙に行けない人もいます。2003年からは、選挙期間中に設けられた「期日前投票所」で投票が可能になりました。
制度開始当初は役所など公共施設に設置されることがほとんどだった期日前投票所ですが、近年は投票所数が増え、若者が集まりやすいショッピングモールや、大学のキャンパスに設けられることも多くなっています。
期日前投票については、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
期日前投票とは?制度や投票方法について分かりやすく解説
タレントやSNSを駆使した広報
総務省や各自治体の選挙管理委員会は、若い世代を意識した広報活動にも取り組んでいます。
若者に人気の高いタレントやインフルエンサーを選挙のPRに起用したり、YouTubeやTikTokなどのSNSで動画広告を流したりしています。
まとめ
- 2022年参院選の全国の投票率は52%だったが、年代別では20代が最も低く34%、10代、30代、40代も全国投票率を下回った。
- 2021年衆院選や2019年参院選も、同様に若い世代の投票率の低さが目立った。
- 投票に行く若者を増やそうと、「センキョ割」や、大学などに期日前投票所を設置するなどの取り組みが行われている。
<参考>
総務省|令和4年7月10日執行 参議院議員通常選挙 発表資料(7.年齢別投票状況について)
参議院選挙:投票率52・05%で確定、前回選を3・25ポイント上回る…16年以来の50%台
総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について
投票区と開票区/とりネット/鳥取県公式サイト
各種選挙の年齢別投票率(抽出調査) – 山口県ホームページ
人口推計令和4年7月報
総務省|令和3年10月31日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査 速報資料
2022参院選、10代投票率どうなる「政治を自分の問題としてとらえて」
10代投票率が最低 ただ18歳は高め、高校での啓発効果か 参院選
80代から急落する投票率、体調に過疎問題も 自治体の模索
総務省|国政選挙の年代別投票率の推移について
総務省|期日前投票制度の創設について – 選挙
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