自民党の「派閥」とは?2022年現在の各派や総裁選との関係を解説

自民党の「派閥」とは?2022年現在の各派や総裁選との関係を解説

政権与党である自民党には、政治や政策方針の違いによる複数の「派閥」があります。

現在の首相(内閣総理大臣)である岸田文雄氏が率いる「岸田派」のように、リーダーである会長の名前を取って「◯◯派」と呼ばれることが一般的です。

派閥の相関関係や勢力図は、首相や内閣のメンバーを選出する際など、政治に影響を及ぼすといわれています。その仕組みはどのようなものなのでしょうか。

2022年10月時点での各派閥の構成や会長、正式名称もまとめているので、ぜひ参考にしてください。

派閥とは

政党内において、同じ利害や政治思想を持つ議員によって作られる集団を「派閥」といいます。1955年に自由党と日本民主党が合流して結党した自民党では、当初から複数の派閥が存在しました。

派閥が政党や政治に与える影響は?

派閥間の抗争や取引によって政権が決まり、政策が左右されることを「派閥政治」といいます。

自民党の派閥関係が特に話題になりやすいのは、総裁選です。

政権与党である自民党では、党首である総裁が首相になることがほとんどです。そのため総裁選は、党のリーダーを決める選挙でありながらも、実質的には国民にとっての首相を決めることになります。

これまでの総裁選では、派閥から候補者を出したり、または特定の候補者を派閥単位で支持したりすることで派閥間の抗争となることが多くありました。

首相を輩出した派閥は与党の中でも主流派となり、反主流派となるその他の派閥に比べて、内閣人事に派閥から多く起用されるなど優遇される傾向があります。また、かつては選挙の候補者調整や資金配分などにおいても、派閥が強い影響力や統制力を持っていました。しかし、近年はその傾向が弱まっているといわれます。

現在の岸田内閣では、最大派閥の安倍派から4人、岸田派・茂木派・麻生派から3人、二階派から2人、森山派から1人という派閥の均衡を取った人数構成です。

菅義偉前首相は派閥に属していないにも関わらず総裁となり、異例のケースだと話題になりました。

自民党総裁選の仕組みについては、こちらの記事で説明しています。
自民党総裁選挙2021!新総裁は内閣総理大臣?!注目のワケや仕組みを解説 | スマート選挙ブログ

国務大臣の選び方は、こちらもぜひ参考にしてください。
国務大臣の選び方や人数を解説!民間人も閣僚になれる?

自民党以外にも派閥はある?

派閥という呼称ではありませんが、立憲民主党には党員の「グループ」があります。その多くが、現在の政党に至るまでの党の分裂や合流の過程に起因するものです。

グループの勢力は代表選などで影響します。ただし、自民党のように厳密なものではないといわれています。

自民党の各派閥

2022年10月現在、自民党には次の6つの派閥があります。

  • 安倍派(清和政策研究会)
  • 茂木派(平成研究会)
  • 岸田派(宏池会)
  • 麻生派(志公会)
  • 二階派(志帥派)
  • 森山派(近未来政治研究会)

各派閥の歴史や現在の会長、所属している内閣や党幹部のメンバーについてまとめました。

安倍派(清和政策研究会)

清和政策研究会は、90人以上が所属する党内最大派閥です。

安倍晋三元首相が会長でしたが、2022年7月の参議院選挙期間中に銃撃を受け亡くなったため、現在は会長不在となっています。

安倍氏の急逝を受け、塩谷立氏と下村博文氏が会長代理を務めていますが、誰が後継者(次期会長)となるかが注目の的です。10月に開かれた総会では、会長は当面空席のままとする方針が示されました。

安倍氏の祖父である岸信介元首相の派閥が源流で、1979年に福田赳夫元首相が立ち上げました。安倍氏の父である安倍晋太郎氏も、会長を務めていたこともあります。

現在の国務大臣では、松野博一官房長官や西村明宏環境大臣、西村康稔経済産業大臣、岡田直樹地方創生担当大臣、党幹部では萩生田光一政調会長が所属しています。

茂木派(平成研究会)

平成研究会の所属議員は50人以上で、2021年11月から茂木敏充幹事長が会長になりました。

吉田茂元首相が率いた旧自由党系がルーツです。佐藤栄作元首相の派閥から分派し、田中角栄元首相が率いた「木曜クラブ」が源流になります。田中派から、竹下登元首相を支持する派閥「経世会」が生まれました。

1994年に小渕恵三元首相が経世会を「平成政治研究会」に改称し、その後「平成研究会」となります。前会長は竹下元首相の弟で、2021年に亡くなった竹下亘氏が務めていました。

現在の国務大臣では、加藤勝信厚生労働大臣や野村哲郎農林水産大臣、秋葉賢也復興大臣が所属しています。

岸田派(宏池会)

岸田文雄首相が会長を務めている宏池会(こうちかい)は、1957年に発足した自民党内最古の派閥です。

吉田茂元首相が率いた旧自由党の流れを汲み、池田勇人元首相の後援会として設立されました。その後、岸田氏の他にも大平正芳氏、鈴木善幸氏、宮澤喜一氏と首相を輩出しています。

現在の国務大臣では、林芳正外務大臣や葉梨康弘法務大臣、池田元首相を義理の祖父に持つ寺田稔総務大臣が所属しています。

宏池会から分派した麻生派(志公会)と、谷垣禎一氏率いる「谷垣グループ」の3つが連携する「大宏池会構想」の可能性が話題になったこともありました。合計人数は100人規模となり、最大派閥の安倍派に匹敵します。

麻生派(志公会)

志公会(しこうかい)は50人以上の議員が所属し、副総裁である麻生太郎元首相が率いています。

吉田茂元首相の孫である麻生氏は、当初宏池会に所属していました。しかし2006年に「為公会」を設立し、その後2017年に山東昭子氏率いる「山東派」などと合流して志公会を立ち上げます。

現在所属している国務大臣は、鈴木俊一財務・金融大臣、永岡桂子文部科学大臣、河野太郎デジタル大臣、山際大志郎経済財政・再生担当大臣です。

二階派(志帥会)

志帥会(しすいかい)は1999年に亀井静香氏の派閥と村上正邦氏の派閥が合流し設立されました。2012年から二階俊博元幹事長が会長となり、菅義偉前首相を強く支持していました。

現在の国務大臣では、谷公一国家公安委員会委員長と小倉将信少子化担当大臣が所属しています。

森山派(近未来政治研究会)

近未来政治研究会は、森山裕選挙対策委員長が会長を務めています。前会長だった石原伸晃氏が2021年10月の衆議院総選挙で敗れ、会長を交代しました。

1998年に山崎拓元副総裁によって設立されました。

「無派閥」「グループ」も

自民党の国会議員全員が派閥に属しているわけではありません。

どの派閥にも属さない「無派閥」や、「グループ」もあります。派閥は掛け持ちで所属することが認められていませんが、グループは可能です。

石破茂氏率いる「石破グループ」のように、所属議員数の減少によって派閥からグループへ組織形態を変えた例もあります。

2021年総裁選の勢力図

岸田文雄首相は前回2021年9月の自民党総裁選で勝利し、総裁・首相となりました。

総裁選では当時首相だった菅氏は出馬せず、岸田氏を含む以下の4人が立候補していました。

  • 岸田文雄氏:岸田派に所属
  • 河野太郎氏:麻生派に所属
  • 高市早苗氏:無派閥
  • 野田聖子氏:無派閥

投票先を厳格に一本化した派閥は、岸田氏を全面支援した岸田派だけであったことが特徴的です。他の派閥は、所属議員の投票先を拘束しなかったり、2人以上の候補者を支持したりしました。

例えば最大派閥の細田派(現在の安倍派)は、高市氏または岸田氏を各自で判断し投票することとします。麻生派は河野氏・岸田氏を支持しつつ、高市氏の支持も容認しました。これまでの総裁選に比べ、派閥の統率が少なかったといわれています。

総裁選は、国会議員と全国の党員票を合わせて1回目の投票を行います。トップとなった候補者が過半数を獲得していれば当選となりますが、過半数に届かなかった場合は国会議員と都道府県連の票による決選投票を実施する仕組みです。

今回の総裁選では、1位だった岸田氏と2位の河野氏がいずれも過半数に届かず、決選投票となりました。

まとめ

  • 派閥とは、同じ利害や政治思想を持つ議員によって作られる政党内の集団をいう
  • 政権与党を担う自民党では、派閥の勢力が総裁の選出を左右する。総裁が首相になることが一般的なため、首相の決定に及ぼす影響も大きい
  • 2022年10月現在、自民党には最大規模の「安倍派(清和政策研究会)」、最古の「岸田派(宏池会)」の他、「茂木派(平成研究会)」「麻生派(志公会)」「二階派(志帥会)」「森山派(近未来政治研究会)」の6派閥がある

 

<参考>
『政治・経済用語集 第2版』山川出版社、2019
『2021新政治・経済資料 三訂版』実教出版編修部、2021
[自民党の派閥とは?]かつては「一致結束・箱弁当」…今も総裁選で影響力
立憲も「派閥」が活性化 ベテラン参加で地殻変動 配慮迫られる創業者・枝野氏 | 毎日新聞
立憲民主党代表選、選挙のしくみと「党内グループ」のまとめ(大濱崎卓真) – 個人 – Yahoo!ニュース
第2次岸田改造内閣が発足、首相「防衛力強化が最重要」
自民執行部に権限集中 「無派閥首相」が象徴: 日本経済新聞
安倍派、集団指導でしのぐ 最大派閥に分裂の歴史: 日本経済新聞
岸田新体制スタート 内閣改造 閣僚の横顔2022:日本経済新聞
自民党の派閥と岸田首相の政権運営という観点からみる日本株
清和政策研究会
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26年ぶりの「竹下派」回帰: 日本経済新聞
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この記事を書いた人
rainy

大学の政治学科を卒業後、報道機関で記者をしていました。主に社会部で裁判、司法を担当。選挙取材も経験しました。退職後の現在はフリーランスライターとして働く、1歳児と3歳児の母です。
「社会の仕組みや動きを知ること・理解することで、新しい世界が広がる」、読者にとってそんな記事を書けるよう、日々精進していきます。

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