法律を改正するにはどうする?目的や流れ、話題の法改正情報も紹介

法律を改正するにはどうする?目的や流れ、話題の法改正情報も紹介

法律が改正されると、私たちの生活に影響や変化が生じることがあります。

例えば2022年には、民法改正によって成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。男性の育休取得を推進する改正育児・介護休業法や、社会保険の適用範囲を拡大する改正年金法も施行され、話題となっています。

法律の改正は、どのような目的方法で実施されるのでしょうか。改正法が施行されるまでの流れや、ニュースで注目されている法改正の事例を紹介します。

法律の改正とは?

法律は、文言を変更、追加、削除してその内容を改めることがあります。法律を改正するには、改正法案が国会で可決されることが必要です。

改正前の法律と区別するため、例えば「改正公職選挙法」「改正児童福祉法」などと呼ばれることがあります。

法律を改正する目的

法律が最初に作られてから時間が経つと、社会情勢の変化技術の進歩によって、成立当初には想定していなかった状況になることがあります。法改正の目的は一般的に、世の中の現状に法律を対応させることです。

例えば2017年に成立した改正資産決済法では、当時普及し始めていたビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)を「支払い手段」として定義づけました。

暗号資産は、インターネットはもちろん、ブロックチェーン技術など新たなテクノロジーが生まれたことにより現れたものです。法改正前は法的な規定がなく、課税方法や悪徳な事業者を取り締まるためのルールなどを明確にする必要がありました。

また、明治時代など古くに制定された法律では、漢字カナ混じり文や文語体の条文もあります。現代において読みやすいものにするため、法改正に際してひらがなや口語体に直すケースもあります。

法改正の流れ

法律を制定する手続きは、国会法などに定められています。

すでにある法律を改正する場合でも、新しい法律を作ったり、廃止したりする場合と同様の手続きです。以下では、法律案(改正法案)が国会での議論を経て、法律(改正法)して成立、施行されるまでの流れを紹介します。

改正法案作成から国会提出まで

国会に法案を提出する権利を持っているのは、国会議員(委員会も可)または内閣です。

国会議員が法案を提出する場合は、衆議院では20人以上(予算を伴う法律案は50人以上)、参議院では10人以上(予算を伴う法律案は20人以上)の賛成が必要です。

また、委員会もその所管事項に関するものであれば、法案提出権があります。委員会が提出する場合は、委員長が提出者となります。

内閣が提出する場合は、法案の作成を担当するのは所管する省庁です。原案が出来上がったら、内容や文言を内閣法制局が審査します。

必要があれば修正を加え、閣議にかけます。閣議とは首相と国務大臣による会議です。閣議決定に至ると、首相から国会(衆議院または参議院)に法案が提出されます。

委員会や閣議については、以下の記事で解説しています。
国会の本会議と委員会とは?違いを分かりやすく解説 | スマート選挙ブログ
「閣議」は内閣意思決定のための会議!その重要な役割とは? | スマート選挙ブログ

国会審議から成立まで

衆議院または参議院に提出された法案は、まずは委員会で審査し、その後本会議にかけられます。

本会議で可決されると、もう一方の議院(衆議院が先議した場合は参議院)に付され、同様に委員会と本会議を経て、可決されると「法案成立」となる仕組みです。

公布と施行

法案成立後、最後に審議した議院の議長から内閣を経由して、30日以内に公布されます。

公布とは、成立した法律を国民が知ることのできる状態にし周知させることで、天皇の告示行為です。一般的には官報に掲載されることで公布が行われます。

法律の効力が実際に発動し、現実に適用されるようになるのが「施行」です。多くの場合、その法律の附則に定められた施行日から効力が生じます。そのため、法案が成立しても、実際に適用されるまでは時間差があります。

例えば、改正法によって新たに禁じられた行為があった場合、施行日以前にその行為をしたとしても、遡って法律を適用し罰せられることはありません。これを「法律不遡及の原則」といいます。

これは、社会に混乱が生じたり、国民の権利を侵害したりすることを防ぐ目的があります。もしも施行日以前に遡って法律が適用されるとすれば(遡及適用)、国民は自分の行為がいつ規制や罰則の対象になるかわからないまま、不安定に過ごさなければならなくなってしまいます。

ただし、国民にとって利益がある場合や権利義務に影響を及ぼさない場合は、例外的に遡及適用されることもあります。

2022年に施行された改正法

2022年に施行され、話題になっている改正法の一部を紹介します。

改正民法:成人年齢引き下げ

2018年に成立した「民法の一部を改正する法律」により、2022年4月1日から、成人年齢がこれまでの20歳から18歳へ引き下げられました。

改正の背景には、世界的には成人年齢を18歳とする国が主流となっていることなどがあります。

民法上、未成年者は契約などの法律行為において保護者の同意が必要です。成人になれば単独で有効に契約を結ぶことが可能で、父母の親権にも服さなくなります。

改正によって、未成年者は「18歳未満」となりました。例えば18歳の人が家を借りるため賃貸借契約を結ぶ際、これまでであれば保護者の同意が必要でした。しかし改正によって成人となったため、自身で有効な契約を結ぶことが可能になっています。

ただし、飲酒や喫煙、競馬や競輪などの年齢制限は20歳から変わっていません。これらは若い世代の心や身体に与える影響が懸念されるためです。

民法改正ではこの他に、女性が結婚できる年齢も変更されました。改正前は男性が18歳、女性が16歳と差がありましたが、改正法では男女ともに18歳が婚姻開始年齢になっています。

選挙権年齢は公職選挙法の改正によって18歳に引き下げられ、2016年に施行されています。

選挙権年齢の引き下げについては、こちらの記事がおすすめです。
選挙権年齢はなぜ18歳に引き下げられたの?世界各国の状況も解説

改正育児・介護休業法:男性育休推進へ

2022年4月1日から、改正育児・介護休業法が施行されました。

改正は、男女ともに仕事と育児を両立しやすい社会にし、出産・育児による離職者を減らすことです。育児休業(育休)をより取りやすい環境づくりや、男性の育休取得を促進しています。

特に、男性の育休を推進する「産後パパ育休」と呼ばれる出産時育児休業制度の導入が注目されました。産後8週間以内に、合計最長4週間の育休を2回に分けて取得できる仕組みです。さらに10月1日からは、子どもが1歳になるまでの通常の育休も2回に分割取得できるようになりました。

業務の調整などで長期的に休むことが難しい場合でも、分割すれば休暇を取りやすくなることを目指しています。

年金制度改正法:社会保険の適用範囲拡大

2022年10月1日から段階的に、社会保険の適用範囲が拡大されます。

従業員数が101〜500人の企業では、これまでは義務のなかった「週の所定労働時間が20時間以上30時間未満」「月額賃金が8.8万円以上」などの要件を満たす従業員を社会保険(厚生年金)の加入対象とすることが義務化されました。

これによって、パートやアルバイトでも社会保険が適用される対象が広がりました。

2024年10月からは、従業員数1〜100人未満の事業者も対象となります。

まとめ

  • 法改正の目的は一般的に、社会情勢の動きや技術の進歩などによる世の中の変化に、法律を対応させること
  • 改正法案も新法の法案と同様、国会議員または内閣が作成して国会に提出する。委員会と本会議を経て可決されると、法律(改正法)となる
  • 昨今話題になった法改正は、成人年齢の引き下げや、育児休業制度の改正、社会保険の適用範囲拡大などがある

 

<参考>
最近の外為法改正 : 財務省
民法(債権関係)の見直し ~「民法の一部を改正する法律」の概要
仮想通貨購入は消費税ゼロ 「支払い手段」と定義
六法ようやく口語体で統一へ 「スルコトヲ得」やめます
法律ができるまで:国会の基礎知識:参議院のあらまし
法律ができるまで | 内閣法制局
税制改正のプロセスについて教えてください。 : 財務省
議員立法の立案プロセス
経過措置と遡及適用
民法改正 成年年齢の引下げ ~若者がいきいきと活躍する社会へ
法務省:民法(成年年齢関係)改正 Q&A
育児・介護休業法について|厚生労働省
【そもそも解説】「産後パパ育休」はじまる 分割できて取りやすく
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の 一
従業員数500人以下の事業主のみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省

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