日本は中央集権国家?中央集権とは何か、メリットやデメリットもわかりやすく解説

日本は中央集権国家?中央集権とは何か、メリットやデメリットもわかりやすく解説

国の政治や国家の体制について議論される時に「中央集権」という言葉をよく耳にします。

中央集権国家にはメリットもデメリットもあるといわれます。中央集権と反対の意味を持つ言葉は「地方分権」で、中央集権と地方分権を組み合わせた国家の運営をするケースが一般的です。

本記事では、中央集権とは何かについてわかりやすく解説。現代の日本は中央集権国家なのか、世界には中央集権国家が存在するかといった点にも触れています。

中央集権とは

中央集権とは、国家や社会集団内でできるだけ多くの権力を中央に集中・統一することです。また、行政上の権限を地方の出先機関に委譲せずに中央官庁が把握している場合も中央集権といわれます。

中央集権と反対の意味を持つ対義語は「地方分権」です。完全な中央集権国家は現代にはなく、ある程度国家に権限を集中させる一方で地方分権を一部採用し、地方にも権限を分散するのが一般的です。

明治憲法下の日本では中央集権の傾向が強く、地方自治体は単なる国の出先機関にすぎませんでした。一方、現在の日本はある程度地方分権であり、分散型行政システムが採用されています。

中央集権のメリットとデメリット

中央集権にすることで国家にはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。日本の現状と課題を含めて解説します。

メリット

  • 意思決定やトラブルへの対応を迅速に進められる
  • 国全体で統一感のある政策が実現しやすい

明治政府が実行した「東京一極集中政策」は、貧困下にあった戦後の日本を短期間で世界有数の豊かな国に発展させました。

デメリット

  • 東京への一極集中、東京と地方の権力的格差
  • 地域特性を活かしにくい
  • 地方の自由競争を阻害する

東京と地方との経済的格差・権力格差が生まれやすくなり、地方の発展に必要な資源が分配されないケースが考えられます。また、地方の決定権が限定されることで、自由なアイディアや地方同士の競争が生まれにくくなり得ます。

日本の中央集権化の歴史

現代の日本は日本国憲法地方自治がうたわれており、典型的な中央集権国家ではありません。日本が典型的な中央集権国家だったといわれる時期は歴史上主に2期間あります。奈良時代と明治時代です。

奈良時代の中央集権体制

701年、日本初の体系的な法律「大宝律令」が完成し、中央集権が強化されました。 大宝律令の完成によって、天皇を中心とした中央集権的な国家体制が生まれました。中央政府の役職や政務の整理、都と地方の行政区分の明確化、都と地方を結ぶ道路の建設など政治・交通などのインフラ整備が進みました。

明治時代の中央集権体制

1868年、明治時代が幕を開け、欧米からさまざまな文化が取り入れられました。江戸時代の日本では、藩主が領地を治める地方分権型の体制がとられていましたが、明治政府は、天皇を中心とした中央集権型の国家体制を目指します。近代国家へと生まれ変わろうと「廃藩置県」「維新の三大改革」「殖産興業の展開」などの中央集権的な体制強化のための政策が敷かれた結果、貧困に苦しんでいた日本の産業が成長し、経済的にも大きな飛躍を遂げることになりました。

現代日本の中央集権体制

 

社会構造が大きく変化した現代の日本では、社会福祉などの分野で地域の実情にそった的確な対応が必要になっているため、住民に近い自治体に権限を移すことが求められています。地方分権化を推進する動きもあり、道州制をはじめとした具体策の議論が進められています。

<関連記事>道州制はこれからどうなる?メリットとデメリットもあわせてわかりやすく解説

 世界の中央集権国家の例

現代世界において典型的な中央集権国家は多くありません。ある程度中央集権である程度地方分権という国家が一般的です。

中央集権国家の典型例として、第二次世界大戦以前のフランスが挙げられます。 歴史、民族、風土、風俗などに多様性のある地方からなるフランスは、1つの国家とし てまとまるために強大な中央権力を必要としていました。フランスでは16世紀のブルボン朝が中央集権的な体制を築き、強力な官僚機構と常備軍によって国家統一を成し遂げました。18世紀末、フランス革命において中央集権的な国民国家が成立しました。1980年台以降は中央政府から地方への権限委譲が進められていますが、フランスは現在、先進国の中では最も強固な中央集権国家であるとみなされています。

日本は前の項で解説したように、現在は典型的中央集権国家ではありません。

中国は歴史的に集権化と分権化を繰り返してきましたが、近年中央集権化が進んでいるといわれています。

連邦制とは

中央集権・地方分権という分類に当てはまりませんが、例外として「連邦」という制度があります。連邦制とは、2つ以上の州が1つの主権の下に集まり、形成される国家のことです。中央政府と州政府の権限が明確に分けられ、国民国家を形成しています。連邦制のメリットは、行政区分が国より連邦のほうが小さいために、小回りの利く政治を実施できることです。一方のデメリットとしては、州間の格差が発生することが挙げられます。

世界で連邦制を採用している主な国はドイツ・カナダ・アメリカ・スイス・ベルギーなどです。

なお「連邦国家」と対になるのは「単一国家」で、日本は単一国家です。

まとめ

  • 中央集権とは、国家や社会集団内でできるだけ多くの権力を中央に集中・統一すること
  • 中央集権制には意思決定がスピーディーにでき、国全体で統一感のある政策が実現しやすいなどのメリットがある
  • 日本は現在地方分権化が進められており、典型的な中央集権国家ではない
  • 現代では世界的に見ても典型的な中央集権国家は少ない

 

<参考>

コトバンク | 中央集権

経団連 | 地方分権・地方制度改革の展開と分散型行政システムの展望を聴取

内閣官房ホームページ 道州制ビジョン懇談会において出された主な論点

NHK 高校講座日本史 | 飛鳥の朝廷と律令国家の形成

NHK 高校講座日本史 | 明治維新

文芸春秋 目覚めよ!日本101の提言 地方分権が進まない理由 政と官の劣化をとめる

自治体国際化協会 | 地方分権に関する方の概観 フランスにおける地方分権化の主眼と今後の展望

SPF 「新時代」中国の中央集権化と法治

コトバンク | 連邦

お金をムダにしない「ドイツ連邦制」の仕組み

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