選挙で候補者や政党の名前を記入する「投票用紙」には、さまざまな工夫が凝らされていることを知っていますか？
用紙には「ユポ」という特殊な素材が使われています。どのようなメリットがあるのでしょうか。
投票用紙に関する豆知識に加え、参院選や衆院選での記入方法、書き間違えてしまった場合の対処や筆記用具（鉛筆）の持ち込みなどの基本的なルールを解説します。
投票用紙とは？
選挙の投票所に行くと、投票用紙を受け取ります。実際に手に取ると、少しスベスベしていて独特の質感があるのではないでしょうか。投票用紙には、公正な投票や迅速な開票作業のための工夫が凝らされています。
紙ではなく「合成紙」、素材は樹脂
投票用紙はその名の通り「用紙」と言いますが、厳密には紙ではありません。株式会社ユポ・コーポレーションが開発、生産、商標登録している「ユポ」と言う合成紙です。木材を原料とする紙とは異なり、その素材には「ポリプロピレン樹脂」が使われています。
ポリプロピレン樹脂は水素と炭素から構成される合成樹脂（プラスチック）で、リサイクルしやすく、燃やしても有害物質が出ないためエコな素材です。公式HPでは、ユポは「紙とフィルムの良さをそなえる機能合成紙」と紹介されています。
「ユポ」を使うメリット
ユポは1986年から投票用紙として販売され、徐々に全国の自治体が導入しました。そして2021年の衆議院議員総選挙では、全ての都道府県でユポの投票用紙が使われています。
なぜ投票用紙にユポを使っているのでしょうか。その理由は、ユポの性質にあります。
紙よりも耐久性や耐水性が優れているため、万が一投票用紙が破れたり、水に濡れたりして記入内容が判読できなくなるリスクを減らせる上、書きやすいこともメリットです。また、投票用紙を投票箱に入れる際に半分に折る人もいますが、ユポは箱の中で自然に開きます。そのため開票作業で用紙を1枚ずつ開く手間が省け、効率的です。
このような利点から、雨や風にさらされることもある選挙ポスターにユポが使われることもあります。
参院選前にチェック！投票用紙記入の基本事項
投票用紙の素材など豆知識を見てきましたが、そもそも投票用紙にはどのように記入するのか、注意点はあるのかという疑問もあります。
2022年7月10日には参議院議員通常選挙を控え、投票に行く前に知っておきたい基本的な事項をまとめました。
投票用紙の記入方法（参院選・衆院選）
投票の一連の流れは、以下のようになっています。
- 受付をする
- 投票用紙を受け取る
- 記載台で記入する
- 投票箱に入れる
参議院選挙では選挙区・比例代表の2枚を、衆議院選挙では小選挙区・比例代表・国民審査の3枚を、それぞれ記入します。
参院選では、選挙区の投票用紙には候補者名、比例代表では政党名または候補者名を記入しましょう。
衆院選では、小選挙区の投票用紙には候補者名、比例代表では政党名を書きます。国民審査の投票用紙は、辞めさせたい最高裁判所裁判官がいる場合は名前の上の欄に×を、いなければ何も記入しません。
参院選やその他の選挙での具体的な投票方法は、以下の記事を参照してください。
【関連記事】2022年7月投開票！参院選とは？選挙の流れや投票方法を分かりやすく解説
【関連記事】初めての投票！当日の流れや選挙の種類を徹底解説
苗字だけや略称でも大丈夫？
また、候補者名は苗字（姓）または名前だけや、政党名は略称でも投票ができます。しかし同姓・同名の候補者がいたり、似た名称の政党があったりする場合は、特定できるように書かなければなりません。どちらに投票したか分からない票は「按分票」になります。
同姓・同名の候補者や政党の略称、按分票についての詳細は以下の記事がおすすめです。
【関連記事】選挙で同姓同名の候補者がいたら？投票はどうする？
【関連記事】略称「民主党」とは？同一略称や按分票についてわかりやすく解説
書き間違えたらどうする？記入の注意点も
投票用紙の記載台には候補者名や政党名の一覧が貼ってあるので、よく見ながら記入しましょう。それでももし候補者名や政党名を書き損じてしまったら、二重線を引いて訂正します。消しゴムは使えません。
また、以下のような記入は投票が無効となってしまうため、注意が必要です。
- 所定の投票用紙を使っていない場合：選挙区の候補者名を比例代表の投票用紙に書いてしまう
- 候補者の氏名以外を記入した場合：立候補していない人の名前や無関係な事柄を記入する
- 2人以上の候補者名を記入した場合:A氏とB氏、どちらに投票するか迷うので両方の名前を書く
- 候補者名に加え、他のことを書いた場合：「さん」などの敬称や応援メッセージなどを書き加える
- 文字が判別できない場合
投票に行ったにもかかわらず、貴重な1票が無効票にならないよう、気をつけましょう。
なぜ「鉛筆」推奨？筆記用具の持ち込みはできる？
投票用紙の記入は、鉛筆が推奨されています。日常やビジネスでは大事な書類を記入する際はボールペンなどで書くことが一般的ですが、なぜ投票用紙は鉛筆なのでしょうか。
その理由は、大切な1票が判別できなくなることを防ぐためです。前述のように、投票用紙の原料にはプラスチックが含まれているため、ボールペンなどではインクがにじみ、読めなくなってしまう恐れがあります。
投票所には鉛筆が用意されているため、持参する必要はありません。一方で筆記用具の持ち込みも可能です。ボールペンなどの使用は禁止されていませんが、上記の理由から鉛筆またはシャープペンシルでの記入が推奨されています。
2021年の衆院選などでは、新型コロナウイルス感染拡大の防止策として、備え付けの鉛筆の使い回しではなくクリップペンシルを配るケースも多くありました。
まとめ
- 投票用紙の素材は紙ではなく「ユポ」という特殊な合成樹脂（プラスチック）が使われている。
- ユポは耐久性・耐水性に優れているので、投票用紙の破損・水濡れ防止や開票作業の効率化に役立つ。
- 投票用紙の記入は苗字のみや略称も可能だが、按分票や無効票にならないよう注意が必要。
- ボールペンなどではインクがにじみやすいため、鉛筆の使用が推奨されている。
＜参考＞
ユポの強み | 紙・合成紙のユポ・コーポレーション
選挙 | 紙・合成紙のユポ・コーポレーション
選挙の投票用紙、実は「紙ではありません」…文具マニアも熱視線
不思議な書き心地の投票用紙。同じ素材で作られたノートがあるって知ってた？｜コクヨ ステーショナリー
総務省｜投票
投票用紙の書き方について – 坂出市ホームページ
Ｑ３：投票用紙、書き間違えたらどうしよう？ | 登別市
投票の有効、無効について／茨木市
選挙の投票用紙、なぜ鉛筆で記入？ | 河北新報オンラインニュース / ONLINE NEWS
備え付けの鉛筆以外の持参した筆記用具を使用して投票することはできますか
最終閲覧日は記事更新日と同日
