同性パートナーシップ制度とは?メリット・デメリットや同性婚との違いを解説

同性パートナーシップ制度とは?メリット・デメリットや同性婚との違いを解説

近年「同性パートナーシップ制度」を導入する自治体が増えています。

東京都では、LGBTQなど性的マイノリティーの人たちのパートナーシップを認める条例が成立しました。2022年11月から運用が始まります。

同性パートナーシップ制度とは、どのようなものなのでしょうか。日本では同性婚が認められていませんが、同性婚とは違いがあるのでしょうか。

LGBTQとは具体的にどのような意味なのかに加え、同性パートナーシップ制度のメリットやデメリットも解説します。

同性パートナーシップ制度とは

同性パートナーシップ制度は、一定の条件を満たした同性カップルを対象に、「パートナー関係である」ことを自治体が証明する制度です。「パートナーシップ制度」「パートナーシップ宣誓制度」など複数の名称があります。

LGBTQなど性的マイノリティー(性的少数者・セクシャルマイノリティー)の人たちが暮らしやすい環境を作るため、多くの自治体で運用が始まっています。

LGBTQとは

LGBTQとは、以下の頭文字を取った言葉です。

  • Lesbian(レズビアン):女性同性愛者
  • Gay(ゲイ):男性同性愛者
  • Bisexual(バイセクシャル):両性愛者
  • Transgender(トランスジェンダー):性自認が出生時に割り当てられた性別と異なる者(身体の性と心の性が一致しない)
  • Queer(クイア):規範的ではない性のあり方を包括的に表す言葉
  • Questioning(クエスチョニング):自らの性のあり方について特定の枠に属さない人、わからない人など

調査機関や調査方法によってさまざまなデータがあり、日本のLGBTQの割合は約3〜10%だといわれています。

近年は「Sexual Orientation and Gender Identity(性指向と性のアイデンティティ)」の頭文字で「SOGI」と表現することもあります。

制度の概要

同性パートナーシップ制度は、都道府県や市区町村の自治体が定める条例要綱によって施行されています。

東京都渋谷区の場合は、次のような定義です。

パートナーシップ証明は、法律上の婚姻とは異なるものとして、男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備えた、戸籍上の性別が同じ二者間の社会生活における関係を「パートナーシップ」と定義し、一定の条件を満たした場合にパートナーの関係であることを証明するもの

(引用元:渋谷区パートナーシップ証明 | 渋谷区公式サイト

具体的には、当事者が役所に申請した後、自治体からパートナーシップ関係にあることを公に認める証明書が発行されます。

詳細は自治体によって異なる部分もありますが、次のような申請条件が一般的です。

  • 成人であること
  • 当該自治体に住所があること
  • 他の人と婚姻関係やパートナーシップ関係にないこと
  • 双方またはどちらかが性的マイノリティーであること

同性婚との違い

同性パートナーシップは同性婚とは異なるので、注意が必要です。どのような点が違うのか解説します。

日本での同性婚は認められていない

2022年現在の日本では、同性で婚姻関係を結ぶ「同性婚」は法的に認められていません

同性婚の可否は憲法の解釈や家族制度の問題にも繋がる論点であり、国会でも意見が割れています。

また「日本で同性婚が認められていないのは婚姻の自由を保障した憲法に反している」として、同性カップルらが損害賠償を求め全国5地裁に訴訟を起こしています。

そのうち2021年3月の札幌地裁判決は、同性婚に関する議論が進んだのは最近であり、国会に立法不作為があったわけではないとして請求は棄却しました。しかし、「同性婚を認めないのは法の下の平等に反する」として全国で初めて違憲だと判断し、話題になりました。現在は札幌高裁で控訴審が行われています。

海外の事例では、2001年にオランダで同性婚が可能になりました。現在はヨーロッパやアメリカ、台湾など30を超える国や地域で同性婚が認められています。

同性パートナーシップとの違い

同性パートナーシップの証明は、婚姻届による「結婚」とは異なります。自治体から認められたカップルであることを証明していますが、法的な効力はありません

自治体によっては、証明書を発行すると、条例による配偶者向けの制度を利用できます。しかし所得税の配偶者控除など、婚姻関係にあれば適用される法律に基づいた国の制度の対象にはならず、当事者にとって大きな課題です。

同性パートナーシップのメリット:自治体や企業の制度が適用される

同性パートナーシップ制度を利用することは、当事者にとって利点があります。

パートナーシップの証明を得ることで、当該自治体や民間企業による夫婦・配偶者向けの制度の対象となる場合があるためです。

自治体の制度では、次のような例があります。

  • 公営住宅への入居申し込みで「家族」として認められる
  • 犯罪被害者支援の遺族給付金の受け取りが可能になる

民間企業では、次のような制度でパートナーを対象とできることがあります。

  • 家族手当など、配偶者がいることを前提とした福利厚生
  • 死亡保険金の受取人
  • クレジットカードの家族カード

民間企業では、自治体のパートナーシップ証明書がなくても対象となるケースもあります。

同性パートナーシップのデメリット:国の制度は対象外

パートナーシップ証明があっても、国が対象を「配偶者」などと定めている制度では適用されません

例えば、次のような場合です。

  • 所得税の配偶者控除
  • 健康保険などの被扶養者になること
  • 子どもの共同親権
  • 遺産の法定相続

同性カップルには、法律上の婚姻関係であれば得られるこれらの権利がなく、経済的・社会的な不平等が指摘されています。

同性パートナーシップ制度は、同性婚が認められていないことで同性カップルがさまざまな不利益・不平等を被ってきたことを背景に、それらを解消するために創設されました。しかし上記のような課題が残っており、国会での立法的な対応が必要になります。

全国200以上の自治体が導入、東京都でも

同性パートナーシップ制度は2015年に東京都渋谷区と世田谷区で初めて施行され、その後全国に波及しました。

2022年9月現在、200以上の自治体が制度を設けています。

都道府県ではこれまで青森、秋田、茨城、群馬、三重、大阪、福岡、佐賀の8府県が導入しており、東京都でも11月から「東京都パートナーシップ宣誓制度」の運用が始まる予定です。

まとめ

  • 同性パートナーシップ制度は、一定の条件を満たした同性カップルが「パートナー関係である」ことを自治体が証明するもの
  • パートナーシップ証明は、婚姻届による結婚とは異なり法的な効力はない
  • 現在の日本では、同性による婚姻(同性婚)は認められていない
  • 同性婚が認められていないことで同性カップルがさまざまな不利益・不平等を被ってきたことを背景に、同性パートナーシップ制度が創設された
  • パートナーシップ証明によって、当該自治体や民間企業による夫婦・配偶者向けの制度が適用されるメリットがある
  • 国が対象を定めている制度では適用されない
  • 同性カップルにおける経済的・社会的な不平等が指摘されている

 

<参考>
東京都パートナーシップ宣誓制度|東京都総務局人権部 じんけんのとびら
LGBTQとは | 東京レインボープライド2022
愛しているのに「結婚」を選べない…“同性婚”が求めるものとパートナーシップ制度の違い 特集「夫婦のカタチ」
SOGIとは?意味やLGBTとの違い、SOGIハラへの対策を解説
パートナーシップ宣誓制度について | 日本LGBTサポート協会
世界の同性婚 | 結婚の自由をすべての人に – Marriage for All Japan –
日本国憲法下での同性婚に関する質問主意書
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パートナーシップ制度とは?メリットや結婚との違いについて解説
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同性パートナーへの生命保険 同性パートナーの保険金受取人指定が可能に | 生命保険・医療保険のライフネット生命
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東京都パートナーシップ宣誓制度|東京都総務局人権部 じんけんのとびら
日本のパートナーシップ制度 | 結婚の自由をすべての人に – Marriage for All Japan –

最終閲覧日は2023年3月22日

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