2022年9月8日、英国(イギリス)のエリザベス女王が96歳で死去しました。王位継承順位1位だったチャールズ皇太子が新国王となりました。
エリザベス女王は英国君主として歴代最長の70年間あまり、国家元首を務めました。国民に「開かれた王室」を目指し、尽力していたといわれています。
英国の王室制度とはどのようなものなのでしょうか。
エリザベス女王の生涯を紹介するとともに、英国王室の仕組みや家系図について解説します。
エリザベス女王とは
エリザベス女王(エリザベス2世、Elizabeth the Second)は、英国君主を歴代最長の70年あまり務め、多くの国民に慕われていました。
エリザベス女王の生涯
エリザベス女王の生涯を大まかにまとめると、以下の通りです。
- 1926年4月21日:ロンドンで生まれる
- 1947年11月20日:フィリップ殿下と結婚
- 1948年11月14日:長男のチャールズ皇太子を出産
- 1952年2月6日:父親のジョージ6世が死去し、女王に即位(25歳)
- 2021年4月9日:夫のフィリップ殿下が死去
- 2022年2月6日:英国君主として初めて、在位70年を超える
- 2022年9月8日:静養先で死去(96歳)
エリザベス女王はどんな人?
エリザベス女王は1926年、後にジョージ6世として国王になるヨーク公とエリザベス妃の長女として生まれました。10歳のとき、叔父のエドワード8世が即位から1年足らずで退位したため、ヨーク公が国王に就きます。エリザベス女王は、皇位継承順位1位となりました。
10代の時には第二次世界大戦が勃発し、陸軍の女性部隊に在籍していたこともあります。ギリシャの王子、フィリップ殿下と結婚し、その後チャールズ皇太子ら4人の子どもを授かりました。
1952年にジョージ6世が急逝し、25歳で女王に即位します。君主として多くの国を訪れ、かつて植民地として支配してきた国々との和解にも努めました。
1997年にチャールズ皇太子の元妻・ダイアナ元妃が事故で亡くなった際には対応を批判されるなど、王室の風当たりが強くなったこともあります。エリザベス女王は「国民に開かれた王室」を目指し、各地の訪問や慈善事業に力を入れ、近年はインスタグラムなどSNSで王室のアカウントを運用するなど取り組みました。
2022年6月には在位70年を記念する「プラチナ・ジュビリー」という祝賀行事が開かれ、パレードなどが実施されました。国民や観光客など多くの人が訪れたことが、エリザベス女王の人気を物語っています。
近年は高齢による体調を考慮して、公に姿を現すことは少なくなっていました。一方で、亡くなる2日前の9月6日には、公務として与党である保守党の新党首に就任したトラス氏を首相に任命しました。
英国王室とは
英国での王室や君主(国王・女王)は、どのような立場なのでしょうか。
立憲君主制・議院内閣制との関係
英国では、国王が国家元首です。
日本では英国を「イギリス」と呼ぶことが多くありますが、正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Irerand)」です。イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランドの4つの国で構成された連合国国家で、「英国国王」とはこの4つの国の国家元首を指します。
また、エリザベス女王は英国のほか、かつて英国が植民地として支配した国々など14カ国の元首でもありました。
英国の政治体制は立憲君主制・議院内閣制です。君主の権力は憲法によって制限され、行政権は内閣、立法権は議会が担っています。
国王・女王は「君臨すれども統治せず」といわれ、政治の実権を直接行使することはありません。君主は「イギリス国民統合の象徴」です。
国家元首や議院内閣制について、詳細はこちらの記事も参考にしてください。
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家系図や王位継承順位
現在の英国王室の親族関係や王位継承順位も注目されています。
エリザベス女王の死去によって、長男のチャールズ皇太子(チャールズ3世)が新国王に即位しました。エリザベス女王と故フィリップ殿下の間には他に、長女アン王女、次男アンドルー王子、三男エドワード王子がいます。
チャールズ皇太子と故ダイアナ元妃の間には長男ウィリアム王子と次男ヘンリー王子がおり、王位継承順位はウィリアム王子が1位となりました。次いでウィリアム王子とキャサリン妃には3人の子ども、長男ジョージ王子が2位、長女シャーロット王女が3位、次男ルイ王子が4位となっています。
英国の王位継承順位はかつて、きょうだい間では男子が優先されていました。しかし2013年の法改正によって、男女を問わず先に生まれた子どもが優先されることになりました。
まとめ
- 2022年9月に死去したエリザベス女王は、歴代最長の70年以上英国君主を務めた
- エリザベス女王は25歳で即位し、国民に「開かれた王室」を目指し取り組んだ
- 英国君主は国家元首で、政治の実権は持たないが「国民統合の象徴」
- 長男チャールズ皇太子が新国王に即位し、孫のウィリアム王子が王位継承順位1位となった
<参考>
エリザベス女王に関するトピックス|朝日新聞デジタル
エリザベス英女王死去、96歳 最長在位「開かれた王室」模索―チャールズ新国王即位
エリザベス女王が死去、96歳 在位70年、英国君主として歴代最長|朝日新聞デジタル
イギリス エリザベス女王とは?その生涯と国民にとっての存在 | NHK
『政治・経済用語集 第2版』山川出版社、2019
『2021新政治・経済資料 三訂版』実教出版編修部、2021
15カ国で元首だった英女王 旧植民地にBLM運動がもたらした変化|朝日新聞デジタル
イギリスの正式名称って?? Column
英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)基礎データ
立憲君主制とは-コトバンク
在位70年記念行事始まる 史上初、国挙げて女王祝福―英
英ウィリアム新皇太子が継承順位1位、長男ジョージ王子は2位に…新国王の人気は今ひとつ|読売新聞オンライン
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