2021年の日本の出生数は約81万人と過去最低を記録し、少子化対策は重要な社会課題の1つとなっています。
少子化に歯止めをかけるため、政府は様々な取り組みを実施していますが、具体例にどのような少子化対策がなされているかわからないという方も多いでしょう。
この記事では、日本の少子化の現状を踏まえたうえで、政府による少子化対策の具体例を解説します。
また、地方自治体による少子化対策の成功例も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
少子化の定義
そもそも「少子化」とは、どのような状態を指すのでしょうか。
人口学において、少子化は、合計特殊出生率(※1)が人口置換水準(※2)を相当期間下回っている状況と定義しています。(参考: 平成16年版少子化社会白書)
(※1)合計特殊出生率:1人の女性が生涯に平均何人の子を産むかを表した指標
(※2)人口置換水準:人口を維持するのに必要な水準
現在の日本の人口置換水準は、約2.08とされています。
日本は、1974年に合計特殊出生率が2.08を割り込んで以降、おおむね低下を続けていますので、少子化の定義に当てはまるといえます。
日本における少子化の現状
2021年の出生数は81万1604人、合計特殊出生率は1.30でした。
出生数は過去最低を記録し、合計特殊出生率も6年連続で低下しています。
1949年のピーク時(出生数:約270万人、合計特殊出生率:4.32)と比べると、3分の1以下の水準になっています。
なお、都道府県別の合計特殊出生率を見ると、もっとも高いのが沖縄県(1.80)、もっとも低いのが東京都(1.08)です。
政府による少子化対策
2020年5月、政府は新たな「少子化社会対策大綱」を閣議決定し、ライフステージに応じた総合的な少子化対策を大胆に進めると掲げました。
ここでは、結婚、妊娠・出産、子育ての観点で政府が実施および検討している少子化対策の具体例を紹介します。
また、2023年6月には、出産や育児に関する支援の一元化を目的に「こども家庭庁」が発足します。
子ども家庭庁については、こちらの記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
【関連記事】「こども家庭庁」とは?設置目的や名前の由来も解説!
結婚支援
内閣府は、結婚に伴う新生活の初期コスト軽減を目的に「結婚新生活支援事業」を実施しています。
一定の条件を満たす世帯に対して、新居の購入費や家賃、引越し費用などに使える補助金が支給されます。
2021年度からは、支援対象となる年齢や収入などの条件が緩和され、より多くの人が利用できるようになりました。
また、補助金の上限額も30万から最大60万円に増額されました。
妊娠・出産支援
2022年4月から、不妊治療に対する保険適用が開始されました。
窓口での自己負担額が3割となったことで、不妊治療の利用促進が期待されています。
また、出産における経済的負担の軽減についても検討されています。
2022年12月10日、岸田首相は、出産時に支給される「出産育児一時金」を現在の42万円から50万円に引き上げる方針を表明しました。
子育て支援
2019年10月より、3歳から5歳までの子どもの幼稚園・保育所・認定こども園等の利用料が無償化されました。
また、令和3年度からの4年間で約14万人の保育の受け皿を整備する「新子育て安心プラン」を公表し、待機児童問題の解決にも積極的に取り組んでいます。
さらに、仕事と育児を両立しやすい社会の実現に向け、2021年6月に育児・介護休業法の改正が行われました。
改正により、男性の柔軟な休み方を可能にする「産後パパ育休」が創設されたり、育児休業の分割取得が可能になったりと育休のさらなる取得促進が期待されています。
地方自治体による少子化対策の成功例
地方自治体の中には、積極的に少子化対策に取り組み、成果をあげているケースもあります。
ここでは、少子化対策の成功例として、兵庫県明石市と岡山県奈義町の取り組みを紹介します。
兵庫県明石市の取り組み
明石市は、兵庫県南部に位置する人口約30万人の街で、2012年から10年間人口が増加していることで注目を集めています。
人口増加の背景には手厚い子育て支援策があり、2011年から「こどもを核としたまちづくり」を掲げ、様々な施策に取り組んできました。
取り組みの特徴としては、支援に対する親の所得制限がないことが挙げられます。
たとえば、高校生以下の医療費や第2子以降の保育料、0歳児の家庭のおむつ、中学校の給食費などが親の所得に関係なく一律で無料になります。
結果、明石市全体の人口増はもちろん、減少傾向にあった年少人口(0歳〜14歳)も増加傾向に転じました。
明石市の取り組みについて、より詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
【関連記事】明石市の子育て支援政策とは?財源や結果を分析!
岡山県奈義町の取り組み
奈義町は、岡山県の北東部にある人口6,000人ほどの小さな町で、その合計特殊出生率の高さから注目を集めています。
奈義町では、2012年に「奈義町子育て応援宣言」を行い、町独自の支援策を進めてきました。
出産祝い金や預かり保育の支援、就学支援など、妊娠出産期から就学期まで切れ目のない支援を行っています。
結果、2005年に1.41だった合計特殊出生率は、2014年に2.81まで上昇し、2019年には2.95と日本トップクラスの水準を記録しました。
まとめ
この記事では、日本の少子化の現状や、政府や地方自治体による少子化対策の例を解説しました。
- 2021年の日本の出生数は過去最低の81万1604人を記録し、合計特殊出生率は1.30で6年連続低下している
- 政府は、ライフステージに応じた総合的な少子化対策を推進し、結婚新生活支援事業や不妊治療の保険適用、育児・介護休業法の改正などに取り組んでいる
- 兵庫県明石市や岡山県奈義町など、自治体独自の手厚い子育て支援によって、少子化が改善しているケースもある
<参考>
内閣府 | 少子化社会対策大綱(令和2年5月29日閣議決定)
内閣府 | 平成16年版少子化社会白書
内閣府 | 令和4年版少子化社会白書
厚生労働省 | 厚生白書(昭和31年度版)
日本経済新聞 | 21年の出生率1.30 少子化対策見劣り、最低に迫る
明石市 | 年齢別人口(住民基本台帳人口)
奈義町 | 奈義町子育て応援宣言
朝日新聞デジタル | 出生率は東京の2倍超 岡山の「奇跡のまち」で記者が受けた逆質問
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