戸別訪問は選挙運動の禁止事項?何がどうしていけないの?

戸別訪問は選挙運動の禁止事項?何がどうしていけないの?

「戸別訪問」という言葉、皆さんは耳にしたことがありますか?

文字通り一軒ずつを訪ねて回ることであり、日本では公職選挙法で禁止されている行為です。何がどのように許されないのか、例外はあるのか、他国ではどうなのかなど、詳しく紹介していきます。

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戸別訪問とは

戸別訪問とは、特定候補者への票の依頼などを目的として、個人の居宅や会社・工場などを訪れることを指します。

戸別訪問のメリット・デメリット

戸別訪問は、日本では禁止されている一方で、多くの先進国では認められているように、戸別訪問にはメリットとデメリットの両方があります。

戸別訪問のメリット

戸別訪問は、候補者側と有権者が、選挙の争点や公約について直接話し合える貴重な機会です。有権者にとって戸別訪問は、政党や候補者の掲げる政策や候補者の人柄や能力について知る機会にもなります。

戸別訪問のデメリット

戸別訪問は、人の目がない屋内で候補者側と有権者が接触するため、買収の温床となりやすいとされています。戸別訪問のデメリットは、公正な選挙を阻害する不正行為を誘発する恐れがあることです。

日本では戸別訪問禁止

日本では、戸別訪問は禁止されています。ここでは、どのような行為が戸別訪問の禁止に抵触するのか、また、なぜ禁止されているのかなどについて解説します。

何をしたら戸別訪問に該当する?

選挙運動のための戸別訪問は、候補者や運動員だけでなく、有権者を含む全ての人を対象として、公職選挙法138条により日本では禁止されています。

軒先で面接する場合や、訪問の相手が不在だったり、面会を拒絶されたりして相手に会えなかった場合でも、意図をもって訪問した時点で戸別訪問とみなされます。

票の依頼のみならず、演説会の開催について告知することや、特定の候補者の氏名や政党を宣伝すること、または選挙相手のネガティブキャンペーンを実施することなど、選挙運動の展開を目的とした戸別の訪問全般について、禁止されています。

戸別訪問禁止の理由

日本では、公正で自由な選挙を維持する目的で戸別訪問が禁止されています。戸別訪問禁止の理由は、最高裁判所によって以下のことがあげられています。

  • 買収や利益誘導などの不正行為の温床となりやすい
  • 有権者の私生活に迷惑を及ぼす
  • 選挙運動にかかる費用や労力がかさみ、候補者間で経済力差により不公平が生じやすくなる
  • 投票が政策などよりも義理や人情に流されやすくなる

戸別訪問禁止への司法の見解

日本における戸別訪問の禁止については、表現の自由に反するなどとして違憲性が過去複数回争われています。

最高裁判所は一貫して合憲判決を下している一方、下級裁判所では何度も、戸別訪問の禁止を違憲とする判決が出されています。

一貫して合憲の立場をとる最高裁判所は、戸別訪問の禁止によって失われる機会よりも、戸別訪問の容認によって選挙の公正が脅かされる恐れの方が大きいとしています。戸別訪問の禁止には、合理性があるとして、違憲性は認めていません。

違憲判決を出した下級審では、戸別訪問が選挙の公正に悪影響を及ぼすとはいえず、また、戸別訪問は有権者だれもが行える優れた選挙運動であり、認めるべきとしています。

戸別訪問と個々面接

軒先での面接も許されないのであれば、道端で一人ひとりと話すこともNGなのでは?と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そのような行為は個々面接といわれる、戸別訪問とは似て非なる行為です。

個々面接とは

個々面接とは、路上や店内、電車やバスの車内でたまたま会った人に投票を依頼することです。

候補者だけでなく有権者も、日常生活の中で偶然会った人に対してついでに、支持する候補者に投票するよう依頼できます。店員が、店舗に来た客に、投票の呼びかけをすることも、個々面接に該当し、認められている行為です。

個々面接は、選挙期間中であればいつでも自由に実施できます。

戸別訪問と個々面接の違い

戸別訪問と個々面接の違いは、目的と計画性にあります。

戸別訪問では、投票依頼を目的としたり、計画的に連続して訪問を行ったりします。対して、個々面接においては、会社や居宅を訪れるのには全く別の用件があり、投票依頼はあくまでついでであることが重要です。

戸別訪問の例外-国民投票-

「戸別訪問」が認められている例外もあります。憲法改正の是非を問う国民投票です。

(国民投票については、こちらをご参照ください:国民投票と住民投票の違いは?事例を交えて分かりやすく解説!

通常の選挙では、公職選挙法によって選挙運動の内容や手段が細かく定められていますが、国民投票では、国のあり方をめぐる議論が国民間で活発になされるよう期待され、戸別訪問をはじめとして、様々な選挙活動の制限が撤廃されています。

(使用できるポスターやパンフレットの種類・枚数が無制限、投票権のない18歳未満や外国人の選挙活動も制限されない、など)

海外における戸別訪問

ここまで、主に日本における戸別訪問について解説してきましたが、諸外国では戸別訪問に関して同様の制限があるのでしょうか。

日本と同様に戸別訪問を禁止している国に韓国があげられますが、多くの先進国(アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリアなど)では戸別訪問が許容されています。

むしろ、欧米諸国では、候補者側は政策を伝え、有権者は候補者の識見や人物を直接知ることのできる、有効な選挙運動の手段として戸別訪問は評価されています。

選挙活動において、候補者と有権者との重要な意思疎通手段として、戸別訪問は中心的戦術とされています。

まとめ

  • 戸別訪問とは、選挙運動の展開を目的として、個人の居宅や会社・工場などを訪れること。全ての人を対象として公職選挙法で禁止されている。
  • 道端などで「偶然」出会った相手に対して個別に投票依頼などを行うことは「個々面接」と呼ばれ、許容されている。
  • 韓国では日本と同様に戸別訪問が禁止されているが、欧米諸国では寧ろ候補者と有権者との重要な意思疎通手段として、選挙活動の中心的戦術である側面が強い。

 

<参考>
選挙運動は明るく公正に行いましょう|いなべ市公式ウェブサイト (city.inabe.mie.jp)

最高裁判例:
・平成1(あ)870  公職選挙法違反
平成6年10月11日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却

・昭和55(あ)1472  公職選挙法違反
昭和56年7月21日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

『地方選挙必勝の手引』 松田馨

『政治・経済資料』東京法令出版

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