選挙の区割りはなぜ変更される?改正案や「ゲリマンダー」も説明

選挙の区割りはなぜ変更される?改正案や「ゲリマンダー」も説明

参議院選挙や衆議院選挙では、議員を選出する地域「選挙区」が決まっています。この区割りは、どのように決まっているのでしょうか。

また、選挙区の定数や区割りは見直されることがあります。なぜ変更するのでしょうか。背景にあるのは「一票の格差」の問題です。

2022年7月の参院選における区割りの他、衆院選小選挙区の区割り改定案や、「ゲリマンダー」についても解説します。

区割りの意味とは

公職選挙法では、各選挙で議員を選出する地域(選挙区)と、選挙区ごとの議員定数が定められています。有権者は自身の住所(選挙人名簿登録地)に応じた選挙区の候補者に投票することが可能です。

この選挙区をどのように分けるかを「区割り」といい、区割りと定数は主に有権者の人口分布によって決まります。

参院選の区割り・定数

参院選の投票は「選挙区」と「比例代表区」です。このうち比例代表区は全国を1ブロックとするため、有権者は住んでいる地域に関わらず、比例代表の候補者または政党に投票できます。

全国比例については以下の記事も参考にしてください。

【関連記事】参議院選挙の全国比例とは?比例代表選挙の仕組みやメリットをわかりやすく説明

選挙区の区割りは、原則都道府県ごとです。ただし、複数の選挙区を1つに統合する「合区」の導入によって、鳥取県と島根県、高知県と徳島県はそれぞれ1選挙区となっています。

2018年の公選法改正で埼玉県選挙区の定数が6人から8人に増え、選挙区全体の議席数が148議席となりました。同年の改正では比例代表の議席数も4増えて100議席となったほか、「特定枠」制度が導入されています。

都道府県別の定数は、以下の通りです。

  • 12人区:東京
  • 8人区:神奈川・大阪・愛知・埼玉
  • 6人区:千葉・兵庫・北海道・福岡
  • 4人区:静岡・茨城・広島・京都
  • 2人区:上記以外の県(合区を含む)

 

合区制度や、「一人区」の詳細は以下の記事もご覧ください。

【関連記事】合区とは?目的や弊害について解説! | スマート選挙ブログ
【関連記事】参院選の「一人区」って?選挙区の定数は2以上なのに、なぜ「1人」!?

衆院選の区割り・定数

衆院選の投票は「小選挙区」と「比例代表」です。

衆院選の小選挙区は、参院選の選挙区よりも細かく分かれています。小選挙区1つにつき、定数は1人です。各都道府県の中に複数の小選挙区があり、「東京1区」「神奈川2区」などと呼ばれます。

また、区割りは必ずしも市区町村の境界と一致していません。そのため、同じ自治体に住んでいても選挙区が異なる場合があります。

比例代表は、全国11ブロックに分かれており、区割りと定数は以下の通りです。

  • 北海道ブロック(定数8人):北海道
  • 東北ブロック(定数13人):青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島
  • 北関東ブロック(定数19人):茨城・栃木・群馬・埼玉
  • 南関東ブロック(定数22人):千葉・神奈川・山梨
  • 東京ブロック(定数17人):東京
  • 北陸信越ブロック(定数11人):新潟・富山・石川・福井・長野
  • 東海ブロック(定数21人):岐阜・静岡・愛知・三重
  • 近畿ブロック(定数28人):滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山
  • 中国ブロック(定数11人):鳥取・島根・岡山・広島・山口
  • 四国ブロック(定数6人):徳島・香川・愛媛・高知
  • 九州ブロック(定数20人):福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄

 

2021年10月に実施された前回の衆院選では、2017年の公選法改正による区割りが適用されました。定数は小選挙区が289人、比例代表が176人です。

改正によって小選挙区の数は青森・岩手・三重・奈良・熊本・鹿児島の6県で1ずつ減少し、その他に東京都や大阪府など13都道府県でも区割りが変更されました。比例代表の定数は東北・北関東・近畿・九州の4ブロックで1ずつ削減されています。

合わせて10議席が減少し、全体の定数は戦後最も少ない465議席となりました。増減した議席数から、ニュースなどでは「0増10減」と表現されます。

区割り変更の理由は「一票の格差」

選挙区の区割りや定数が法改正によって変更されるのは、どうしてでしょうか。その理由は、区割りを見直して「一票の格差」を是正することにあります。

一票の格差とは、選挙区ごとに議員1人当たりの有権者数が異なるために、1票の価値に不平等が生じる問題です。1票の価値は人口の多い地域ほど軽く、少ない地域では重くなる傾向があります。有権者人口に応じて区割りや定数を見直すことで、この格差をできるだけ小さくしようとしてきました。

一票の格差についての詳細は、こちらの記事がおすすめです。
【関連記事】一票の格差って?何が問題なのか理解しよう

衆院選小選挙区の見直し

衆院選小選挙区の区割りは法律で定められており、10年ごとに見直さなければなりません。国勢調査(大規模調査)の結果発表から1年以内に、衆議院選挙区画審議会(いわゆる「区割り審」)において改定案を勧告し、最終的には国会で法改正が決まります。

国勢調査とは、総務省統計局が全国の人口や年齢分布などを調べる調査です。西暦の末尾が0の年(2010年など)に大規模調査が、5の年(2015年など)に簡易調査が実施されます。

2020年の大規模調査の結果(人口など)は2021年に発表されました。2022年6月現在、区割りの見直しが勧められています。

「10増10減」の改正案

区割り審は、25都道府県で計140小選挙区の区割りを変更する改定案を岸田文雄首相に勧告しました。改定案で小選挙区の数は「10増10減」となり、一票の格差は現在の最大2.096倍から1.999倍に縮小します。

今回の見直しでは、人口比により近い配分ができるとされる「アダムズ方式」が初めて適用されました。

アダムズ方式については以下の記事で詳細に説明しています。
【関連記事】アダムズ方式とは?仕組みや導入の経緯を解説

区割りはどう変わる?東京・大阪なども変更

改定案では、小選挙区が増加するのは東京(5増)、神奈川(2増)、埼玉・千葉・愛知(各1増)の5都県です。一方、宮城・福島・新潟・滋賀・和歌山・岡山・広島・山口・愛媛・長崎の10県で各1ずつ減少します。

また、北海道・茨城・栃木・群馬・静岡・岐阜・大阪・兵庫・島根・福岡の10道府県では定数の変更はありませんが、区割りの線引きが変わる予定です。

恣意的な区割り?「ゲリマンダー」とは

選挙制度や区割りの改定は、時に「(与党などが)自党に有利になるようにしているのではないか」という指摘を受けることがあります。

特にアメリカの連邦議会下院の選挙区割りを巡っては、恣意的な線引きが「ゲリマンダー(gerrymander)」と呼ばれ問題視されてきました。この名称は、1812年にアメリカ・マサチューセッツ州知事ゲリーが自党に有利になるように区割りし、いびつになった選挙区の形が「サラマンダー(ギリシャ神話の火トカゲ)」に似ていたことによるものです。

日本でも、1956年に当時の鳩山一郎首相が提案した小選挙区の区割り(のちに廃案)が、自民党に有利になるよう考えられていたとして「ハトマンダー」と批判されました。

まとめ

  • 選挙区の区割りや定数は、有権者人口に応じて決められている。一票の格差を是正するため、見直しや変更が行われることもある。
  • 参議院の選挙区は都道府県ごと(合区を含む)に2〜12人の定数が決まっている。衆院選の小選挙区は現行法で289あり、定数は各1人。
  • 小選挙区の区割りや定数は、国勢調査の結果に基づき現在見直しが進められている。改定案では10増10減
  • アメリカなどでは、恣意的な選挙区割りが「ゲリマンダー」と呼ばれ、問題視されている。

 

 

<参考>
選挙区とは-コトバンク
参議院議員選挙制度の変遷
衆議院選挙 小選挙区と比例代表ブロックを詳しく -衆院選-|NHK
【図解・政治】変わる衆院の定数・区割り(2017年7月)
総務省|選挙の種類
選挙区割りの見直し
小選挙区「10増10減」など区割り案 首相に勧告 見直し過去最多 | NHK
25都道府県・140選挙区で変更 過去最多、1票格差1.999倍―衆院10増10減、区割り審勧告:時事ドットコム
米、ゲリマンダーの爪痕深く 恣意的区割りで綱引き
米下院の区割り、特徴は? 「ゲリマンダー」 意図的な線引き可能=回答・鈴木一生 | 毎日新聞
<社説>週のはじめに考える 日本の「トカゲ」の姿は:東京新聞 TOKYO Web
『2021新政治・経済資料 三訂版』実教出版編修部、2021
最終閲覧日は記事更新日と同日

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