「首相公選制とは何か知りたい」
「首相公選制のメリットとデメリットは?」
「海外で首相公選制を導入した事例を知りたい」
首相公選制とは、首相を国民の投票によって選出する制度です。本記事では、首相公選制の概要や導入のメリットとデメリット、海外での導入事例を紹介します。
首相公選制とは
首相公選制の概要と、日本で導入が検討された事例を紹介します。
国民が直接投票により首相を選ぶ制度
首相公選制とは、政府の長である首相を国民からの投票によって直接的に選出する制度のことです。
首相を置く国家では、首相は議会によって選出されたり、元首によって任命されたりするのが一般的です。
これに対し首相公選制では、議会による選出や元首による任命ではなく、国民による直接投票によって首相を選出します。
一般的な方法では、国民の大多数が支持する人物が必ずしも首相に就任するとは限らないため、国民の意思と乖離する可能性が考えられます。
首相公選制の導入によって、民意に基づいた首相の選出が行われることを目的としているのです。
日本で導入するには憲法改正が必要
日本の内閣総理大臣(首相)は、国会議員の中から議決で指名されます。
第1項 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。 この指名は、他のすべての案件に先だつて、 これを行ふ。
そのため、日本で首相公選制を導入するには、憲法の改正が必要になります。
現在、首相になるためには国会議員である必要があり、かつ国会議員から過半数の支持を得て指名、選出されなければなりません。これは内閣総理大臣指名選挙、首相指名選挙、首班指名選挙とも呼ばれています。
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名される。指名は単記記名投票で行われ、投票の過半数を得た者が指名された者となる。なお、1回の投票で過半数を得た者がいないときは、上位2人の決選投票を行い、多数を得た者が指名された者となる。
2001年の小泉内閣下で「首相公選制を考える懇談会」が発足し、首相公選制を検討する動きがありましたが、実現には至りませんでした。
首相公選制のメリット・デメリット
首相公選制を導入した場合メリットの他、デメリットが生じることが想定されます。
ここでは「首相公選制を考える懇談会」報告書の「国民が首相指名選挙を直接行う案」を導入した場合を参考に、メリット・デメリットに該当する内容を紹介します。
メリット
「首相公選制を考える懇談会」報告書より、首相公選制を導入するメリットに該当する内容を紹介します。
同報告書の「国民が首相指名選挙を直接行う案」の「考慮されるべき点」の(1)には、首相の直接指名選挙により変化すること、期待できること、予想されることとして、以下のような内容が記載されています。
- 統治機構の中に広く国民全体の利益を代表しようとする一部門が一定の独立性を持って存在するようになる
- 首相の政治的基盤と民主的正統性が確保される
- 首相の在任期間の安定と業績及び責任の明確化
- 官僚制に対する上からの統制の強化
- 立法機関としての自律性が高まる(内閣の存続への配慮から独立して法案ごとの審議が可能になるため)
- 国会議員をいわゆる「大臣病」から解放する効果(国会議員の役割は主として立法に限定され、また閣僚との兼職も禁止されるため)
- 首相となる政治家の類型が、派閥政治を含む与党内部の事情又は論理で推挙される政治家から、国民に政策と構想を訴える政治家に変わる
- 現行制度の下で与党内調整として行われている様々の交渉又は調整が、首相対国会の交渉として表に出る傾向が生まれ、政治過程の公開度は高くなる
デメリット
「首相公選制を考える懇談会」報告書より、首相公選制を導入するデメリットに該当する内容を紹介します。
同報告書の「国民が首相指名選挙を直接行う案」の「考慮されるべき点」の(2)には、首相の直接指名選挙の導入における課題として、以下のような内容が記載されています。
- 国民が候補者の政策や首相・副首相としての能力を十分に理解し評価した上で投票するに足る客観的な情報がマスメディアをはじめ様々な媒体によって適切に提供されるかどうか懸念が残る
- 国民が上記の情報を有効に活用して冷静な投票ができるかどうか懸念が残る
- 首相が属する政党が国会では少数派であるといういわゆる「分割政府」状態が生じ、首相と国会の間の政治的停滞又は膠着状態が起きかねない、
- 上記「分割政府」状態の下では、統治責任が議会と首相に分散することになり、これは与党の政治責任が不明確化する
- 少なくとも首相を選出し内閣を支えることで求心力を保っている政党の更なる弱体化
- 議員がより地元利益密着型になっていく可能性
首相公選制の導入事例(導入国)
イスラエルでは、過去に首相公選制を導入した事例があります。これは世界で唯一の首相公選制導入事例です(2022年8月現在)。
首相公選制の導入から廃止までの経過は以下の通りです。
- 1992年、イスラエルのクセネセト(国会・議会)で首相公選法が成立
- 1996年、初めての首相選挙が行われ、ベンヤミン・ネタニヤフが選出
- 1999年、2回目の首相選挙が行われ、エフード・バラックが選出
- 2001年2月、3回目の首相選挙が行われ、アリエル・シャロンが選出
- 2001年3月7日、クネセトにおいて首相公選制廃止が決議
このように、イスラエルでは首相公選制が導入されたものの、3回の首相公選選挙が行われた後、首相公選制は廃止されてしまいました。
唯一の導入事例であるイスラエルにおいて短期間で廃止されてしまったため、日本を含めた各国においても首相公選制の導入には慎重にならざるを得ないともいえるでしょう。
首相公選制について まとめ
本記事では首相公選制について紹介しました。以下に内容をまとめます。
- 首相公選制とは、首相を国民からの投票によって直接選出する制度のこと
- 日本で首相公選制を導入するには、憲法の改正が必要
- イスラエルは過去に首相公選制を導入していた時期がある
- イスラエルにおける首相公選選挙は3回しか行われておらず、3回目の選挙の後に首相公選制は廃止された
<参考>
「首相公選制を考える懇談会」報告書
第四章 イスラエルにおける選挙制度と政党 臼杵 陽
首相公選制実現に向けて(塾報) | 松下政経塾 (mskj.or.jp)
[選挙用語]首相(首班)指名選挙…衆参両院で実施 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
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