この記事では、都道府県知事選挙とは何か、いつ行われるのかなど都道府県知事選挙の概要をわかりやすく紹介します。また、都道府県知事選挙の特徴について解説します。
都道府県知事選挙とは
総務省の選挙区分では、都道府県知事選挙は「地方公共団体の長の選挙」に該当します。「地方公共団体の長の選挙」は一般的に首長選挙と呼ばれ、他に市区町村長選挙が含まれます。市区町村長選挙と都道府県知事選挙は、大部分が共通していますが、被選挙権を得る年齢など多少の違いがあります。
知事選挙の概要
ここでは、都道府県知事選挙の概要を以下のポイントに沿って紹介します。
- 選挙権
- 被選挙権
- 知事選挙が行われるのはいつ?
- 選挙運動期間
選挙権
都道府県知事選挙において選挙権(投票する権利)を持つのは、満18歳以上であることに加え、その都道府県に3カ月以上住んでいることが条件です。
この要件は、憲法93条に基づきます。
地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
被選挙権
都道府県知事で被選挙権を持つ人(立候補できる人)は、満30歳以上です。
また、都道府県知事の被選挙権の要件に住所要件はありません。住所がある都道府県と異なる都道府県の知事選挙に出馬することも可能です。
一方で、都道府県議会議員選挙に立候補するためには、3カ月以上、その都道府県に住んでいる必要があります。
都道府県知事選挙と議会議員選挙におけるこの違いは、都道府県知事選挙では広く人材を得るため、議会議員選挙では地域との関係が重要であるためという理由によります。
知事選挙が行われるのはいつ?
都道府県知事の任期は4年です。
任期満了による選挙の場合は、任期満了日の前30日以内に行われます。(公職選挙法 第三十三条)
リコール(住民による解職請求)や不信任議決(都道府県議会が行う)により失職した場合は、知事が失職した日から50日以内に選挙が実施されます。
都道府県知事選挙は、タイミングが合えば4年に一度の統一地方選挙に組み込まれます。2023年の統一地方選挙では、9道府県の知事選挙が行われました。
選挙運動期間
都道府県知事選挙の選挙運動期間は、参議院議員選挙と同じ17日間です。この日数は、国政選挙・地方選挙の中で最長です。
都道府県知事選挙の特徴
都道府県知事選挙には、以下の特徴が挙げられます。
- 有権者数が多いこと
- 1人しか当選しないこと
有権者数
都道府県知事選挙では、1人を選ぶのに対し有権者数が多いことが特徴のひとつです。
同じように、選挙区で1人しか当選しない選挙に衆議院議員総選挙における小選挙区選挙があります。2021年衆議院議員総選挙で東京都の小選挙区は25区ありました。(2024年衆議院議員総選挙からは1票の格差是正のため30区となります。)
小選挙区では25区に分かれる有権者が東京都知事選挙では1人を選ぶことから、知事選挙における有権者数の多さがうかがえます。
2021年衆議院議員総選挙で有権者が最多の小選挙区だった東京13区では約48万人だったのに対し、2020年東京都知事選挙の有権者数は約1150万人でした。
供託金の没収
また、有権者の多さは立候補者の供託金が没収されやすいという特徴にもつながります。
供託金は、選挙に立候補する際に法務局に預ける金銭や債権のことです。一定の得票数に達しないと返却されることなく没収されます。
都道府県知事選挙では、供託金の金額は300万円です。また、供託金の返還基準は有効投票数の10分の1以上の得票です。有権者数が多く、供託金の返還基準の票数が多いため、都道府県知事選挙では供託金を没収される立候補者がしばしばいます。
2024年都知事選挙では、56人が立候補し、53人が供託金を没収されました。4番目に得票数の多かった、約27万票を得た候補者も供託金没収点に達しませんでした。
供託金について詳しくはこちらの記事で紹介しています。
世界と日本の供託金ランキング‐供託金とはわかりやすく解説‐ | スマート選挙ブログ (smartsenkyo.com)
高い再選率
一般的に選挙では現職が有利であり、その傾向は都道府県知事選挙にもあてはまります。
現在(令和6年9月29日時点)の都道府県知事47人のうち32人が2回以上の当選経験を持ちます。最も多い当選回数である5期目の現職の知事は5人います。
都道府県知事選挙は有権者数が多く、選挙運動期間が長いため新人の立候補が難しいという特徴があります。一方で、現職は任期中にその都道府県内で高い知名度を得るため、新人より現職の方が有利という傾向にあります。
知事の再選については、こちらの記事で詳しく解説しています。
都知事の再選は何期連続まで?首長に多選が多い理由や多選禁止・自粛条例について解説
都道府県の長を「知事」と呼ぶ理由
ここまで都道府県知事選挙について解説してきました。ここでは、なぜ「都道府県長」ではなく「知事」と呼ばれているのかについて紹介します。
「知事」という言葉は本来、寺院の雑事や庶務を行う役職名のことでした。その後、「知事」は中国で地方府の長官を指すようになります。日本では、明治維新のときに中国の制度を参考にして、都道府県の行政の長が「知事」と呼ばれるようになりました。
まとめ
- 都道府県知事選挙は「地方公共団体の長の選挙」のひとつ
- 都道府県知事の任期は4年であるが、任期の途中で解職や辞職の可能性があり選挙は4年に1度とは限らない
- 選挙権を得るにはその都道府県に3カ月以上住んでいる必要があるが、被選挙権については住所の要件はない
<参考>
総務省|選挙の種類
日本国憲法 | e-Gov法令検索
選挙運動期間とは
選挙制度研究会『実務と研修のためのわかりやすい公職選挙法』
21年衆院選「1票の格差」、最高裁は「合憲」…17年選挙の判決に続いて2回連続
有権者1146万人 都知事選で過去最多、若年層が増加: 日本経済新聞 (nikkei.com)
「10増10減」新区割り詳細 東京都 衆議院小選挙区 25から30に | NHK
【東京都知事選】前回は8割超が供託金没収…「挑戦者」後絶たない理由 – 産経ニュース
全国知事会 (nga.gr.jp)
松田馨『地方選挙必勝の手引』
知事 | 生活の中の仏教用語 | 読むページ | 大谷大学
東京法令出版『政治・経済資料』
都知事選の供託金没収、総額1億5900万円 上位3人除く53人が対象で過去最高額に – 産経ニュース
【詳しく】兵庫 斎藤知事 失職し 出直し知事選に立候補を表明
地方公共団体の議会の議員及び長の 選挙期日等の臨時特例に関する法律 参照条文 ○公職選挙
統一地方選挙2023 衆参補欠選挙 |NHK選挙WEB
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