ネクストキャビネットとは?日本版・影の内閣について簡単に解説

ネクストキャビネットとは?日本版・影の内閣について簡単に解説

ネクストキャビネット(次の内閣)は、日本の野党が政策を検討し決定する機関です。

イギリスの「シャドー・キャビネット(影の内閣)」に倣って組織されますが、具体的にはどういったものなのでしょうか。

本記事では、ネクストキャビネットの概要・目的・現在のメンバーについて、成立経緯を踏まえて分かりやすく解説します。

ネクストキャビネットとは

ネクストキャビネット(次の内閣)とは、もともと旧民主党が設置したシャドー・キャビネットのことです。

シャドー・キャビネットを取り入れた日本の政党は複数あり、それぞれ名称が異なります。

ここでは、ネクストキャビネットに焦点を当てて解説していきます。

日本版・影の内閣

シャドー・キャビネット(影の内閣)は、政権交代を目指す野党が現政権に対抗するために、内閣を模して設置する組織です。

つまり政権運営のシミュレーションを行いながら、現政権の政策を審査する政党内の機関と言えます。

シャドー・キャビネットについて詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】シャドー・キャビネットとは?イギリスや日本の事例を簡単に解説 | スマート選挙ブログ

ネクストキャビネットも、実際の内閣と同じように影の閣僚として「ネクスト大臣」を任命します。

各担当役職を預かるネクスト大臣は、省庁に対応した部会を統括します。部会で行われるのは、主に専門分野に関する審議です。

各ネクスト大臣が集まる「閣議」も開かれます。法令審査や党の政策検討を行い、「閣議合意」まで実施します。

設置の意味と目的

ネクストキャビネットの設置には、政権交代に向けて政権担当能力を高めるという意味があります。

野党時代から政権運営の訓練を積むことで、スムーズな政権交代を実現するのです。

民主党時代の目的は、長年続いていた自民党政権を倒し、政治家主導の新しい政府を作るというものでした。

さらに党内の議論と意思決定を迅速化し党の結束を強めるために、菅直人氏が鳩山由紀夫氏に提案した背景もあります。

ネクストキャビネットはこうして始まった

ここでは、ネクストキャビネットの始まりから現在までの歴史について解説します。

始まりは民主党

ネクストキャビネットの始まりは、1999年10月のことです。

自民党を中心とした3党連立政権の小渕内閣に対抗するため、野党第一党だった旧民主党の鳩山由紀夫代表により設置されます。

第一次ネクストキャビネットでは、平均年齢が13歳も若いことや、既得権益への反対が掲げられました。

菅直人氏が旧民主党代表に選出されると、2003年から名称が「次の内閣」に変更されます。

2009年までの間に合計13回設置され、ネクスト総理大臣としては以下のような人物が就任しています。

  • 鳩山由紀夫氏
  • 菅直人氏
  • 岡田克也氏
  • 前原誠司氏
  • 小沢一郎氏

2009年に鳩山内閣が発足すると、次の内閣は正式な内閣となりました。

連立政権だった鳩山内閣において、次の内閣から実際に総理大臣・閣僚に就任したのは、名簿に記載のあった20名のうち6名です。

政権退陣後の動き

2012年に民主党が政権から退陣すると、新代表の海江田万里氏が再び次の内閣を設置しました。

2015年に新しく代表となった岡田克也氏も、引き続き次の内閣を組織します。

流れに変化が起きたのは2016年のことです。

民主党と維新の党が合流し、新たに民進党が結成されます。

民進党の初代代表に岡田克也氏が就任すると、次の内閣は代表直属の新体制となりました。

しかし、衆議院選挙の結果を受けて岡田克也氏は責任を問われ、代表戦に不出馬の意向を示します。

新代表の蓮舫氏や続く前原誠司氏も次の内閣を設置しましたが、2017年に民進党が分裂したことで一時消滅しました。

立憲民主党で復活

民進党解散後、分派した各政党の間で次の内閣は設置されませんでした。

そうした中、分派政党の一つである立憲民主党の泉健太代表が、2022年8月26日に「ネクストキャビネット」の名称で設置を発表します。

9月13日には正式なメンバーを公表し、国会でも承認されました。

新しいネクストキャビネットは、党における政策の最高意思決定機関という位置づけです。

現政権の閣僚に対応させる形で役職が配置され、現職大臣にネクスト大臣が論戦を挑むとしています。

現代のネクストキャビネット

2022年12月の段階で、ネクストキャビネットを設置しているのは野党第一党である立憲民主党です。

ここでは、立憲民主党が発表したメンバーと、どのように評価されているのかを紹介します。

ネクスト大臣一覧

立憲民主党のネクストキャビネットは「闘う次の内閣」と銘打ち、13名のメンバーで構成されています。

2022年9月13日に発表されたネクスト大臣(敬称略)の一覧は以下の通りです。

  • ネクスト総理大臣:泉健太
  • ネクスト内閣官房長官:長妻昭
  • ネクスト内閣府担当大臣:杉尾秀哉
  • ネクスト総務大臣:野田国義
  • ネクスト法務大臣:牧山ひろえ
  • ネクスト外務・安全保障大臣:玄葉光一郎
  • ネクスト財務金融大臣:階猛
  • ネクスト文部科学大臣:菊田真紀子
  • ネクスト厚生労働大臣:早稲田ゆき
  • ネクスト農林水産大臣:金子恵美
  • ネクスト経済産業大臣:田嶋要
  • ネクスト国土交通・復興大臣:小宮山泰子
  • ネクスト環境大臣:近藤昭一

評価と防衛大臣問題

発表されたネクストキャビネットのメンバーは、若手と女性を積極的に起用した点を特徴とします。

泉健太代表は党内のジェンダー平等が進んだと評価し、政策の各分野にも反映させたいと述べました。

一方、防衛大臣と外務大臣が兼務となっている点に疑問の声も上がっています。

これを受けて泉代表は、「あくまで人数が少ないため分野を集約した結果」であり、「実際の政権与党として常態化は考えられない」という趣旨の発言をしました。

今後ネクスト大臣を増やす可能性にも触れています。

2023年度国会に向けて、「アンテナを高くして準備を」と意欲も見せています。

まとめ

本記事では、ネクストキャビネットについて解説しました。

  • ネクストキャビネットはもともと民主党版シャドー・キャビネットのこと
  • 菅直人氏が提案し、鳩山由紀夫氏が設置した
  • 政権交代を目指し、党を強化するのが狙い
  • 2009年に政権交代を果たし、ネクストキャビネットから6名が入閣した
  • 民主党退陣後は野党再編もあり、一時消滅する
  • 2022年に民主党から分派した立憲民主党の泉代表が復活させた
  • 13名のネクスト大臣で構成され、ジェンダー平等が進んでいる
  • 防衛大臣の兼任に疑問も出たが、あくまで一時的なものであり、今後ネクスト大臣を増やす可能性がある

 

<参考>
次の内閣とは – コトバンク
ネクスト・キャビネットが初会合/各大臣が所信発表|民主党アーカイブ
歴代の民主党「次の内閣」閣僚一覧|民主党アーカイブ
<党代表選>代表候補の3氏、テレビ出演で国民にアピール|民主党アーカイブ
ネクスト・キャビネットが初会合/各大臣が所信発表|民主党アーカイブ
民主党とは – コトバンク
組織 > 民主党略年表
鳩山『次の内閣』 2009.5~ 閣僚名簿|民主党アーカイブ
第93代鳩山内閣|首相官邸
民主党海江田「次の内閣」が発足、初「閣議」|民主党
岡田新体制のもと「次の内閣」第1回会議を開催|民主党
民進党結党大会・岡田克也代表就任記者会見2016年3月27日(日)|民進党
長妻昭代表代行記者会見2016年3月31日(木) – 民進党
岡田氏、9月の代表選不出馬を表明 民進党: 日本経済新聞
泉代表、新執行部発足。ネクストキャビネット設置へ – 立憲民主党
【両院議員総会】泉「次の内閣」発足 「誰もが活躍できる、わが国を目指していく」と泉代表 – 立憲民主党
「次の内閣」設置の狙いは? 立憲民主党長妻昭政調会長インタビュー 「どちらがふさわしいか見て」|東京新聞
泉健太代表記者会見2022年9月16日(金) – 立憲民主党
【次の内閣】第13回閣議 「来年の通常国会に向けて、アンテナを高くして準備を」泉代表 – 立憲民主党
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