東京都知事選挙の投開票が、2024年7月7日(日)に実施されます。
現職の小池百合子都知事は、2期目を務めています。このように、「地元の知事・市長はずっと同じ人が務めているな」と感じたことはないでしょうか。
首長(市町村長・都道府県知事)の任期は4年ですが、同じ人が同じ選挙に出馬し当選する「多選」が少なくありません。
本記事では首長の多選について、以下のポイントに沿って解説します。
- 首長の任期
- 首長の多選の禁止
- 首長に多選が多い理由
首長の任期は?
首長(市町村長・都道府県知事)の任期は地方自治法により、4年と定められています。
第百四十条 普通地方公共団体の長の任期は、四年とする。
基本的には4年ごとに選挙が執行され、再度首長を選出することになっています。
首長の多選は禁止されていない
「〇〇市長が3期連続当選」といった報道を耳にしたことはないでしょうか。
同じ選挙で同じ人が複数回にわたって選出されることを「多選」といい、首長の多選には原則上限はありません。
アメリカ大統領の三選禁止は憲法で禁止されていますが、首長の多選は憲法で禁止されていないため、原則何期まででも務めることができるのです。
多選禁止条例は施行されていない
過去に首長の多選を禁止する条例を制定する動きがありましたが、憲法に反する疑いがあることから、施行にまでは至っていません。
平成9年には、秋田県知事が知事の多選禁止条例制定の意向を表明しましたが、憲法上疑義があるため、条例提出は断念したとされています。
また、神奈川県では、平成19年9月に多選禁止条例案を議会に提案。同年10月に「別に条例で定める日から施行する」と修正された上で、可決されました。しかし、施行日を定める条例は制定されておらず、これまで施行されていません。
総務省の「首長の多選問題に関する調査研究会報告書 」では、首長の多選制限と憲法の規定との関係や、憲法上許容される多選制限の内容についてまとめられています。
上記の報告書では、首長就任の通算期数によって制限することは過度な制限であるが、連続就任を制限するのは適当であることなどが述べられています。
通算期数により制限することは、当該期数に至った者は二度と当該地方公共団体の長の職に就任することができなくなるという点で、過度の制限と考えられることから、連続就任を制限することが適当であると考える。
多選自粛条例を制定している自治体はある
前述した通り、首長の多選を条例で部分的に制限することは憲法上問題ないとされていることから、多選自粛条例を制定している自治体もあります。
多選自粛条例は多選の禁止ではなく、多選の自粛を努力義務としたもので、連続2期超または3期超の在任をしないことを努力義務としています。
多選自粛条例制定の目的は各条例により異なりますが、主に以下の2点としています。
- 首長の職に同一の者が長期にわたり在任することにより生じるおそれのある弊害を防止するため
- 首長の在任期数を定めることで、清新で活力ある市(町村)政運営を確保すること
なぜ首長は多選が多いのか
冒頭で述べたように「首長の在任期間が長い」と感じたことがある人も少なくないと思います。
一般的に首長は選挙において有利であるため、多選が多い傾向にあります。
選挙は現職が有利といわれていますが、首長選挙は1人しか当選できないため、特にその傾向が顕著だからです。
首長が選挙で有利な理由としては、主に以下のようなことが挙げられます。
- 知名度
- 支援団体の数
- 低投票率
首長は新人と比較すると圧倒的に知名度があります。一度当選すると自治体内のイベントで挨拶をしたり、市政だよりなどに名前や写真が掲載されたりするため、4年の任期の間に一気に知名度が向上するのです。
また、支援団体の数においても新人と比較すると圧倒的に有利でしょう。任期中に行政運営に携わる中で、自治体内の業界団体などとの人間関係ができあがるため、次期選挙でも有利になることが考えられます。
さらに、低投票率も首長の多選を後押ししていると考えられます。首長選挙は浮動票や若年層の票が動きにくい傾向があるため、高齢者を中心に認知度の高い現職が有利になるといわれています。
多選の歴代都知事
現職の小池百合子都知事だけでなく、過去の都知事の多くが再選しています。
- 石原慎太郎:4期(1999年4月-2012年10月)
- 鈴木俊一:4期(1979年4月-1995年4月)
まとめ:首長の多選について
本記事では首長の多選について解説しました。以下に内容をまとめます。
- 首長(市町村長・都道府県知事)の任期は4年
- 憲法上、首長の多選(同じ人が複数回同じ選挙に当選すること)は禁止されていない
- 多選を部分的に制限することは憲法上問題ないため、多選自粛条例を制定している自治体もある
- 多選自粛条例では連続2期または3期超の在任をしないことを努力義務としている
- 選挙における圧倒的有利さから、首長には多選が多い傾向にある
<参考>
首長の多選問題に関する調査研究会
多選禁止条例・多選自粛条例 | 法制執務支援 | 条例の動き
高齢でも、多選でも、なぜ首長選挙では現職が圧倒的に有利なのか | アゴラ 言論プラットフォーム
歴代公選知事名簿(都道府県別) | 知事検索 | 都道府県情報 | 全国知事会
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